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2018.11.03 OB戦スコア
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← ◆◇◆◇◇◇◇◇ 小さな、部屋だった。 からっぽで、何もない。 仄暗い屋内には、家具の一つも置かれてない。 四角い箱。白塗りの壁や天井。 木目のフローリングは、埃を被り。 窓から、朝焼けの光だけが射す。 伽藍堂の空間に、穏やかな茜色が灯る。 朧気な薄明りの部屋は、寂寞に包まれる。 静かに、漠然と、時間だけが流れていく。 そんな“マンションの一室”で。 ボクは壁に寄りかかるように、腰掛けていた。 沈黙の中で、虚空へと視線を向けながら。 緩慢な時の流れに、身を任せていた。 桜色の髪を持つ“砂糖菓子の少女”が、ボクの隣に座る。 薄暗い部屋の茜色を、静かに見つめている。 ボクも、彼女も、ただ其処に居る―――。 『……どうか、これは』 沈黙を、静かに断ち切るように。 傍らの少女に、ボクは語りかける。 『ボクの懺悔だと、思ってほしい』 それは、己の旅路の果てに得た“答え”であり。 そして、己の背負った“罪の告白”だった。 『ボクはこの世界で、愛の姿を見た』 ボクは、振り返った。 この聖杯戦争で辿った物語を。 共に歩み、背負い続けた、二人の少女を。 飛騨しょうこ。 “今度こそ、向き合いたい”。 彼女は歌い続け、断絶を乗り越えた。 小鳥は死の果てに、祈りを繋いだ。 雨を越え、慈しい唄を歌い、真っ直ぐな愛を親友へと届けた。 松坂さとう。 “愛のために、生きたい”。 彼女は無垢な祈りを抱き、駆け抜けていった。 砂糖菓子は死を超えて、祈りに殉じた。 受け取った想いを胸に、運命の愛へとその命を捧げた。 『死が分かつとも、決して終わらない』 そんな少女達の羽ばたきを、ボクは最期まで見届けた。 『……キミたちの愛に、そんな祈りを見出した』 しょうこも。さとうも。 何処までも、愛に直向きだった。 彼女達だけではない。 さとうの想いを受け止めたしおも。 想いを抱く機凱のアーチャーも。 誰もが愛に殉じ、愛を貫いていた。 『ボクは、キミたちとは違った』 けれど、ボクは。 そう、在れなかった。 『愛を、呪いにしてしまったんだ』 遠い日の記憶。 歌を紡ぐ少女は―――シアンは、かつてのボクが歩む意味の全てだった。 彼女は、守らねばならない存在だった。 しかし、ボクは。 傍らに寄り添う愛を。 受け止められなかった。 『ボクの傍らに居てくれたシアンを、自分の罪の証と見てしまった』 かつて、シアンは命を落とした。 ボクの師に等しい存在だった、アシモフの手によって。 彼女は、共に死にゆく筈だったボクに、自らの想いを託してくれた。 シアンの自己犠牲的な献身によって、ボクは命を繋ぎ止めた。 守るべき少女に、ボクは救われた。 そうしてシアンは死を超越し、ボクに寄り添う“謡精”と化した。 そんな彼女に、ボクは自らの罪を見てしまった。 シアンを守れず、シアンを救えず、結局は彼女を死に至らしめた―――そんな己の業が、常に纏わりついた。 ――――ボクは、シアンを守れなかった。 ――――彼女を死者にするばかりか。 ――――彼女の方がボクを守って、その存在を捧げたのだ。 だからこそボクは、寄り添うシアンに苛まれた。 生命の枠組みを越えて、ボクにしか知覚できない霊体となったシアンは、次第に他者への関心を失っていった。 人間であることを喪失したかのように、彼女はボクだけに笑顔を振り撒いた。 その姿に、ボクは自らの罪を更に見出していった。 彼女がこうなったのは、他でもない己のせいだと。 やがてボクの中で、シアンは“かつての罪の象徴”へと変貌していった。 『ボクは、ボクの中にいる“愛する者”を、受け入れられなかった』 シアンとの旅路に打ち拉がれたボクは、“一人の少女(オウカ)”に新たな心の支えを見出した。 彼女は摩耗して打ち拉がれたボクを、暖かく受け入れてくれた。 新しい居場所に己の拠り所を見つけたことで、ボクはシアンを無意識に“過去”として規定してしまった。 そしてシアンにも、日常からの疎外の果てに、自らが“死者”であるという決別を受け入れさせてしまった。 ボクとシアンの想いは、すれ違い続けた。 互いに案じ合いながら、心は結び付かず。 それ故に、最後は互いに互いを手放した。 『だからこそ……彼女を喪ったんだ』 きっと、シアンにあの結末を迎えさせたのは。 彼女を籠の中に束縛した“高天の皇神”でも、その手で死を齎した“もう一人の雷霆”でもない。 ましてや、彼女の力を強奪した“理想郷の使徒”ですらない。 ―――“自分は、もうここにいなくてもいい”。 ―――“彼は、ひとりでも生きていける”。 シアンにそんな想いを抱かせた、ボク自身だ。 あの瞬間、ボク達の旅路は終わりを告げた。 聖杯戦争を通じて。 さとう達との出会いを経て。 幾つもの想いに触れて。 死してなお、寄り添い合う“愛”を見て。 ボクは、答えに辿り着いた。 『ボクの中に、もうシアンの声は届かない』 そうして、ボクは。 その答えを―――受け入れた。 ボクの中にあるシアンの声。シアンの歌。 結局それは、過去の記憶が生んだ幻影に過ぎない。 己の後悔と悲嘆が作り出した、執着の証でしか無い。 『それでいい。それが、答えなんだ』 シアンは、もういない。 それだけなら、とうの昔に分かっていた。 けれど、今のボクは。 シアンを喪ったことの意味を、やっと受け入れられた。 自分には、彼女と再び会う資格などないのだ。 しょうこ。さとう。 ボクは彼女達のようになれなかった。 愛する人と向き合えず。 愛する人の死を越えられず。 共に在る未来へと、目を向けられず。 自らの業に、ただ押し潰された。 だからこそ、永遠の愛を貫けなかった。 これは、ボクに与えられた罰だ。 エゴを貫き通して、世界を掻き乱して。 結局何も掴み取れなかった、罪人の顛末だ。 聖杯を得ようとも、得られずとも、関係はない。 愛を裏切った過去の業は、どんな奇跡でも拭えない。 故にボクは、今度こそシアンを喪ったのだ。 愛を喪失し、ボクは思い返す。 この舞台で出会った少年の姿を。 ―――神戸あさひ。 ―――彼の願いは、既に聞いていた。 彼は、“家族との幸福を得ること”を求めた。 掌から零れ落ちた妹を取り戻して、全てをやり直したい。 それは即ち、さとうを内面化した妹の存在を否定することだった。 ボクには、その意味が理解できた。 大切だった者の変貌を受け入れられず、“奇跡”によって己の道を取り戻そうとしている。 言うなれば、それは。 相手の意思の否定であり。 自己満足のための行為であり。 身勝手な独善に過ぎない。 そう断じることも出来ただろう。 ―――それでも、神戸あさひを憎めなかったのは。 ―――ボクもまた、エゴのために戦っていたからであり。 ―――ボクと同じ業を、彼に見出したからだった。 かつてボクは、シアンとの決別を受け入れるしかなかった。 今の彼女は“ミチル”であり、自分が守り抜こうとした“シアン”はもういない―――。 ボクは、抗いようのない結末を受け止めた。 それが彼女にとって幸福であると信じて。 神戸あさひは、違った。 彼は、ボクの合せ鏡だった。 変わってしまったシアンを認められず、彼女と共に在る時間を取り戻そうとする―――そんな“有り得たかもしれないボク自身”だった。 愛する者との断絶ほど、大切な者との離別ほど、胸を引き裂かれることはない。 故にボクに、彼を否定する資格などなかった。 否定など、出来るはずがなかった。 満足気に事切れていた彼が、最後に何を思っていたのかは知る由もない。 ボク達と別れて、そして命を落とすまでの間に、何を得て、何を見出したのか。 その答えはきっと、彼自身にしか分からない。 ボクはただ、ボクの道を歩むしかない。 シアンを喪った。彼女の声は届かない。 その現実を、受け止めるしかない。 『ボクは、せめて……』 だからこそ、ボクは思う。 一呼吸を置いて、口にする。 『彼女の人生の幸福だけでも、祈り続けたい』 己になんの価値も無いというのなら。 せめて愛する人の価値だけでも祈りたい。 『愛を貫こうとする誰かの想いを、守り抜きたい』 己は何も手に入れられないのなら。 誰かの愛(ネガイ)だけでも、守り抜きたい。 ボクのように、取り零すことのないように。 慈しき誰かの道筋を、照らして往きたい。 『……それがボクに出来る、贖罪だ』 きっと、ボクは。 心の何処かで、それを理解していた。 だからこそ、この聖杯戦争に―――ボクは召喚された。 シアンの声を、望まないのなら。 シアンの喪失を、受け止めたのなら。 何故、ボクはサーヴァントになった? 答えはただ一つ。 ボクのこれまでの旅路に、納得が欲しかったから。 自分の戦いに、意味があったのか。 それを確かめたくて、ボクはしょうこの歌に呼び寄せられた。 しょうこの想いを守り抜くことで、自分の存在する意味を確かめたかったのだ。 エゴを貫き、エゴを押し通し。 そうして、後悔を背負い続けても。 ボクには、ボクのエゴを貫くしかない。 変わらぬ己のサガを自嘲して。 ボクは、喪ってきたものを振り返る。 『アーチャー』 ボクの隣に座る“砂糖菓子の少女”。 彼女はボクの言葉を聞き届けてから、静かに口を開いた。 『あなたのそれは、“愛”だと思うよ』 そうして、彼女は。 ボクのエゴを、想いを。 シアンに抱いてきた感情を。 そんな言葉と共に、肯定する。 『今でもずっと悔やみ続けるくらい、その娘を愛していたんだね。 けれど貴方は、そんな自分を見つけられなかったから……聖杯戦争に招かれた』 ボクは思わず、目を丸くして。 彼女の方へと、視線を向けた。 『自分を好きになれないのって、辛いよね』 彼女はゆっくりと、ボクの方を向いて。 その瞳で、ボクを見つめていた。 彼女は、自嘲するように微笑んでいた。 まるで過去を振り返るかのように。 自らの“出自”を、追憶するかのように―――。 『……私としおちゃんの想いは、途絶えなかった』 そして彼女は、言葉を紡ぐ。 『しょーこちゃんの祈りだって、私に届いた』 自分の愛と、この世界での道程。 それらを噛み締めるように。 『みんなの愛を、あなたは繋いでくれた』 ボクのことを、見つめ続ける。 『だから。あなたと、その娘の愛も……』 彼女の言葉を、ボクはどう受け止めていたのか。 自分自身にも、それを知る由はなかったけれど。 『終わることなんてない』 宝石のような、彼女の紅い瞳は。 ボクのことを、真っ直ぐに捉えていた。 それだけは、確かなことだった。 ――――貴方は、皆の愛を繋いだ。 ――――貴方の愛も、終わりはしない。 彼女はそうして、ボクを肯定してくれた。 戸惑いと、動揺。そして、一欠片の感慨。 ボクの胸に、様々な感情が去来する。 『……ねえ、アーチャー』 小さな部屋を包む、朝焼けの茜色。 箱庭の中をぼんやりと照らす、微かな薄明かり。 それは仄暗くて、何処か物悲しくて。 『しょーこちゃんの傍にいてくれて、ありがとう』 けれど、今は。 少女の想いに寄り添われて。 その朧気な光に抱かれて。 小さな安らぎを、覚えていた。 ◆◇◆◇◇◇◇◇ ――――極光と、爆熱。 ――――破局と、災厄。 ――――轟音。轟音。轟音。 ――――五感が、塗り潰される。 ――――破壊が、降り注ぐ。 ――――死が、幾度となく。 ――――己を、押し潰しに来る。 周囲は、最早焦土と化していた。 まるで戦火に飲まれたかの如く。 市街地は、破壊の限りを尽くされていた。 次々に飛来する爆炎と熱弾。 機関砲の如く放たれる怒涛の質量。 破滅の嵐を齎す、徹底的なまでの空爆。 其処には、焔獄が顕現していた。 燃やされ。砕かれ。穿たれ。崩され。 怒涛の咆哮がけたたましく轟く中。 全てが、灰燼に帰していく。 世界の終末が訪れるかのように。 全てが、焼き尽されていく。 上空。何処までも蒼い空。 鮮明な景色を背負い、“機械仕掛けの極星”は地上を見下ろす。 視界に入る都市ごと纏めて、敵を焼き尽くすべく。 その巨大な鉄翼より展開される“無数の砲身”から―――“魔弾”を次々に繰り出す。 劫火が荒れ狂う、禍災の中心。 猛き蒼雷が、激流に抗うように。 眩き閃光を、迸らせる。 「おおおおおおおおおォォォォォォォォォォォォ―――――ッ!!!!!!!!!」 ガンヴォルトは、ただ吼えていた。 自らの肉体と霊基から、ありったけの魔力を引き出し。 迫り来る爆撃を、全力の雷電によって凌ぎ続ける。 雷撃鱗が、次々に襲い掛かる光弾を掻き消す。 迸る放電が、無数の降り注ぐ鉄塊を撃ち抜く。 弾ける落雷が、数多もの熱源を撃墜していく。 幾十。幾百。幾千。幾万 夥しい物量と熱量の弾幕。 凌ぎ切れ。灼き切れ。断ち切れ―――。 血に汚れた身体を振り絞り、ガンヴォルトは雷電を我武者羅に放出する。 「――――迸れ!!!“蒼き雷霆(アームドブルー)”ッ!!!」 最早、限界など受け入れない。 負傷、消耗、疲弊―――そんなものはどうだっていい。 摩耗していく魔力の肉体に、必死で鞭を打つ。 使える燃料を只管に焚べて、雷霆は叫ぶ。 ―――閃く雷光は反逆の導。 ―――轟く雷吼は血潮の証。 ―――貫く雷撃こそは万物の理。 「“VOLTIC CHAIN(ヴォルティックチェーン)”――――ッ!!!!」 幾重に解き放たれる、巨大な鉄鎖。 まるで蜘蛛の巣のように張り巡らされ。 その全てが電撃を放出しながら、膨大な数の掃射を焼き払っていく。 しかし、間髪入れず。 漆黒の槍が、連射される。 それは、風を切り裂きながら。 “無数の鎖”を、いとも容易く突き破る。 混沌の黒槍。 イミテーション・ケイオスマター。 幾つにも分裂させた武装を、砲弾の如く放っていた。 ガンヴォルトは、即座に駆け出す。 轟炎の流星が降り注ぐ中を、必死に走り抜ける。 黒槍から逃れながら、歯を食いしばる。 雷撃鱗は、最早“解除されなかった”。 途切れぬ砲撃を防ぎ、凌ぎ、時に削られながら。 それでも即座に“修復”を繰り返し、展開を続けていた。 クードスの蓄積。託された祈り。 令呪による加速。共鳴と解析の連鎖。 そんな中で繰り広げられた、果てなき死闘。 ガンヴォルトの霊基は、既に限界を超越していた。 “爪”を経た先の伝説。 オルタ化したガンヴォルトにとっては、未来における戦い。 “鎖環(ギブス)”の逸話さえ、彼は既に再現していた。 あの“旱害”との戦いで、雷霆は己の未知なる伝承を“自らの能力”として手繰り寄せている。 未来のガンヴォルトは“第七波動(セブンス)”の限界を超え、“暴龍”と称される圧倒的な力を得ていた。 その影響により“蒼き雷霆”の出力は飛躍的に上昇した。 そうして到達した“次の段階(ネクストフェーズ)”―――その一つが“雷撃鱗の常時発動”である。 永続する雷撃鱗が、致命傷を妨げる。 降り注ぐ暴威から、ガンヴォルトを守り続ける。 しかし、それだけだ。 止め処無い圧倒的な猛攻に対し、ただやり過ごすことしか出来ない。 攻めなければ、詰む。 このままでは、物量に押し潰される。 蒼き雷霆は、決死の覚悟で力を振り絞る。 「迸れ、“蒼き雷霆(アームドブルー)”……!!!」 ―――天体の如く揺蕩え雷。 ―――是に到る総てを打ち払わん。 「―――“LIGHTNING SPHERE(ライトニングスフィア)”ァァァッ!!!!」 暴龍の咆哮と共に、放電を繰り返す雷球の壁が展開される。 迫り来る絨毯爆撃を掻き消しながら、ガンヴォルトは跳躍した。 雷球を纏い、ガンヴォルトは飛翔する。 業火の雨霰の中を、強引に突き抜けていく。 弾ける雷電。 駆け抜ける霹靂。 繰り返される爆炎。 あらゆる弾幕を突破しながら。 蒼光の雷霆は、機凱の天使へと目掛けて翔ぶ。 歌は、聞こえない。 爆音と轟音だけが、鼓膜を響かせる。 感覚の全てが、死の狭間に立っている。 最早、己と敵だけしか見えない。 ただ突き進むことだけが、存在を奮い立たせる。 再び降り注ぐ、“混沌の黒槍”。 雷壁に直撃する、致死の刃たち。 閃光が迸り、その熱量が拮抗し。 そして―――相殺へと至る。 激突したケイオスマターとライトニングスフィアが、ほぼ同時に消滅した。 「迸れ……“蒼き”、“雷霆”……―――!!!」 霊基の魔力を滾らせて。 雷霆は、すかさずに“次弾”を解き放つ。 ―――煌くは雷纏いし聖剣。 ―――蒼雷の暴虐よ、敵を貫け。 「“SPARK(スパーク)”――――“CALIBUR(カリバー)”―――――ッ!!!!」 雷撃の巨剣を突き立てて、流星の如く突進を続ける。 破壊を齎す無数の嵐を、凄まじい勢いで突破していく。 轟音。衝撃。波紋。爆炎。 夥しい数の弾幕を振り切り、ガンヴォルトは只管に翔けていく。 前へ。前へ。前へ、前へ、前へ―――。 肉体の限界さえも突き抜けるように、彼は我武者羅に前進していく。 その刃を、雷撃を。 視線の先に居る敵へと届かせるべく。 彼は只管に、飛び続けた。 そして、ガンヴォルトは。 数多の極星を、突き破り。 数多の破壊を、超えて。 シュヴィの眼前へと、迫る。 まさしく稲妻の如く突き抜ける“雷霆”を前に。 シュヴィは、その両眼を見開いた。 「進入禁止(カイン・エンターク)」 ―――典開。 雷剣を妨げる“壁”。 刃を受け止める“防御”。 しかし、迸る閃光は。 立ちはだかる防壁さえも、貫かんとする。 「進入禁止(カイン・エンターク)」 ―――二重典開。 “壁”が、持ち堪える。 それでも雷剣は、吼える。 それでも雷剣は、挑む。 「進入禁止(カイン・エンターク)―――!!」 ―――三重、典開。 “壁”が、遂に上回る。 蒼雷の剣が、限界を迎えた。 輝く刃が弾け、砕け散る。 「迸れ、“蒼き雷霆(アームドブルー)”!!! 械翼を撃ち抜く、極光の昇雷となれッ!!!」 だが―――まだだ。 まだ、終わらない。 蒼き雷霆は、それでもなお吼える。 ありったけの魔力を絞り出し、叫び続ける。 少女の祈りに報いる、“威信”の雷剣。 この手に、再び解き放つ―――! ―――掲げし威信が集うは切先。 ―――夜天を拓く雷刃極点。 ―――齎す栄光、聖剣を超えて。 「“GLORIOUS STRIZER(グロリアスストライザー)”――――!!!!!」 雷光の聖剣が―――三重の防壁を、粉砕した。 硝子の破片のように、粉々に砕け散っていく。 肉体が、消耗していく。 魔力で構築された殻が、次第に朽ちていく。 ガンヴォルトは、それを悟っていた。 マスター不在の中、令呪のブーストと自前の魔力によって現界を繋ぎ止め。 度重なる連戦とダメージにより、霊核は既に限界を迎えている。 そんな状況において、彼はスペシャルスキルの連続発動という離れ業を成し遂げた。 まさしくそれは、意地による限界の突破だった。 されど、境界線を飛び越えたのは彼だけではない。 マスターを喪いながら宝具の全力解放を行い、死力を懸けて猛り続けている。 それは、シュヴィもまた同様だった。 「ッ、『全方交差(アシュート・アーマ)』―――!!」 驚愕に表情を歪ませたシュヴィが、即座に対処を行う。 全方位に対する“霊骸”の噴射。推進力と猛毒による、形無き防壁。 「ッ、ぐ、あああああああ――――ッ!!!!」 ガンヴォルトが、絶叫する。 既に全身を“霊骸”に汚染されている彼にとって、それは致死の呪いに等しく。 その苦痛は、瘴気は、ガンヴォルトの肉体を瞬く間に蝕んでいく。 最早、立ち向かうことなど出来ない。 最早、足掻くことなど出来ない。 この害毒を前にして、雷霆は堕ちていくしかない。 ―――その筈だった。 ガンヴォルトが、歯を食いしばった。 聖剣を突き立てるように構えたまま。 彼は、眼前の敵を見据えていた。 「―――――まだ、だ……」 全身を猛毒に蝕まれながら。 ガンヴォルトは、闘志を滾らせた。 「まだ……終わらない……ッ!!!」 その姿を、前にして。 シュヴィは―――戦慄する。 「貫けェェェェ――――――ッ!!!!!」 そして。 聖剣の刃が。 遂に、霊骸の防壁を。 一閃するように――――切り裂いた。 雷電が、弾けるように迸る。 瘴気を貫き、閃光を走らせ。 眩き蒼で、鮮明に視界を染めた。 シュヴィは、目を見開く。 三重の防壁。霊骸の噴射による阻害。 幾重にも重ねた防御が、突破された。 その意地に、その咆哮に。 少女は、気押されかける。 ―――迫る。 ―――迫る。 ―――迫る。 ―――迫る。 雷電が、聖剣が。 シュヴィへと、迫る。 荒れ狂う“暴龍”が。 機凱へと、迫る。 その身を穿つべく。 その身を貫くべく。 一直線に、突き抜ける。 そして、眩き刃は。 シュヴィの、機械の肉体を。 間もなく、貫かんとした―――。 ――刹那の合間に。 ――シュヴィの思考が、入り乱れる。 “蒼き雷霆”から流れ込んだ記憶が、情報が。 まるで走馬灯のように、けたたましく反響していく。 “蒼き雷霆”。最強の“第七波動”。 解析を繰り返し、己の武器へと昇華させた能力。 その力の真髄を、一瞬の狭間に喚び起こす。 “掲げし祈歌が集うは切先”。 “轟かせるのは相想の叫び”。 “戦禍を裂く雷刃極光”。 “齎す栄光、械剣を超えて”。 “この遊戯に、幕を下ろせ”。 ――――瞬間。 ――――蒼き雷霆が、目を見開いた。 熱と共に、痛みが駆け抜ける。 意識が揺さぶられる。 視界が、紅に染まる。 五感が、崩壊していく。 迸るような異常が、神経を灼く。 蒼き雷霆が解き放った“聖剣”は。 真正面から、打ち砕かれていた。 機凱が放つ“一撃”が、その雷鳴を引き裂いた。 「私、が……」 そして、ガンヴォルトは気付く。 “何か”に貫かれていることに。 “何か”に穿たれていることに。 「一手、先を……行った……」 やがて彼は、視線を落とした。 真紅の血液が、止め処なく溢れている。 抗えぬ苦痛が、己を蝕んでいく。 “機械仕掛けの聖剣”が。 雷霆の身体に、深く抉り込まれていた。 秘めたる第七波動の力を解き放つ能力『UNLIMITED VOLT(アンリミテッドヴォルト)』。 威信を宿した聖剣を解き放つ究極の雷撃『GLORIOUS STRIZER(グロリアスストライザー)』。 ガンヴォルトの第七波動を解析し、自らのものとして取り込んだシュヴィは、その極限の力を“結合”した。 「『聖典・蒼雷煌刃(グロリアスストライザー・テスタメント)』」 即ち、それは――――必殺の聖剣。 この遊戯に幕を下ろす、機巧の鬼札。 その刃は“不治の呪縛”に祝福される。 機械仕掛けの聖剣は、蒼き雷霆の聖剣を上回った。 ◆ 堕ちていく。 意識が、身体が、魂が。 奈落へと、墜落していく。 終焉の幕が、下りていく。 動け、動け、動け―――。 幾らそう訴えても。 肉体を支える雷電は、応えてくれない。 全身が“霊骸”で朽ちていく。 振り絞られた魔力が枯渇していく。 五感も、掠れていく。 鼓動の熱が、失われていく。 呼吸すらも、ままならない。 腕を、足を、指先を動かそうと藻掻いても。 身体は人形のように、呆然と揺れるのみ。 胴体を一直線に貫かれて。 深く抉られた刺傷から、鮮血が溢れ出る。 体中を灼くような熱と痛みに蝕まれ。 ガンヴォルトは、宙を舞うように転落していく。 走馬灯が、過る。 懺悔が、脳裏に浮かぶ。 “大切な人を守ってほしい”。 二人の少女は、己に祈りを託した。 魔力パスを通じて、彼女達の遺志はこの身に刻み込まれた。 ―――ボクは、いったい。 ―――何を成し得たのだろう。 戦禍の雨に。 葛藤と苦悩は、融けていく。 その疑問に答える者は無く。 蒼き雷霆は、死の淵へと身を委ねていく―――。 その時、彼は。 その眼を、見開いた。 己の身から零れ落ちていく“破片”を。 霞む双眸で、確かに捉えていた。 『満ち行く希望(フィルミラーピース)』。 それは、全てを映し出す夢幻の鏡片。 蒼き雷霆が愛した少女の力を封じ込めた、心の断片。 己の転落と共に、虚空を舞う“彼女との縁”。 ガンヴォルトは、必死に手を伸ばそうとして。 しかし、その掌は何も掴めず。 伸ばされた手は、行く宛もなく。 だというのに。彼の脳裏には。 ――――“うたが、きこえる”。 ――――“いつかのうた”。 ――――“あのこの、うたが”。 あの時の感覚が、鮮明に蘇っていた。 跳ね上がる魔力と電力。猛る威信。 己の想いと誓いに寄り添う―――“翼”への安らぎ。 ガンヴォルトの薄れゆく視界は。 離れゆく鏡片を、確かに捉え続けていた。 それは、己と彼女を分かつ“呪縛”の象徴であり。 そして、己と彼女を繋ぎ止める“祝福”の具現だった。 その破片は、今。 彼にとっての、最後の“絆”となる。 ――――満ちていく。 ――――求めた希望(あした)が。 ――――その心に、焼き付く。 ――――翼(いのり)が、此処にある。 霊基に、再び魔力が流れ込む。 雷電が、己の魂を駆けていく。 悲壮の暗雲が、切り裂かれていく。 再び彼は、手を伸ばした。 取り戻された気力を振り絞り。 摩耗しきった肉体を、動かした。 届け。届け。届け。届け――――。 「――――届け」 その掌の先に。 蒼き雷霆は“光”を見た。 ◆◇◆◇ 小鳥は歌う。 慈しい唄を。 小鳥は目指す。 心の果てへと。 小鳥は、羽ばたく。 愛を取り戻すために。 失意の濁流を抜け。 曇天から一条の光が射す。 その時、既にもう。 歌声を融かす雨は、上がっていた。 蒼い空を仰いで。 あの日の歌を背負って。 小鳥は、永久へと飛び立つ。 ◆◇◆◇ 《ねえ、お願い―――!》 《彼は今も、ずっと戦い続けてる!》 《貴女を見失っても!誰かの幸せのために、走り抜いてるの!》 《だからっ!応えてよ、シアン!》 《彼のために、歌を奏でて!!》 《アーチャー!》 《あんたを、独りにさせない!》 《挫けそうになったら!》 《私も、傍にいるからっ!》 《あなたが居たから、さとうと向き合えた!》 《あなたが居たから、私はまた唄えたの!》 《慈しいあなたの旅路を、誰にも呪わせない……!》 《あの娘の歌を!!あなたに、届けさせて!!》 《――――GV!》 《あなたと出会えて―――》 《私はずっと、幸せだったよ!!》 ◆◇◆◇ 小鳥の唄だけは。 決して、誰のものにもならない。 如何なる解析も、模倣も、捉えられない。 その詩は、彼女だけのものだ。 何故なら、彼女は。 言葉を融かす雨の中でも。 愛のために、歌い続けたから。 雨は、上がった。 愛の唄は、空へと届いた。 慈しき小鳥、飛騨しょうこは。 蒼き雷霆、ガンヴォルトのマスターだ。 彼女は、叫んだ。 祝福(ウタ)を、繋ぎ止めた。 “電子の謡精(サイバーディーヴァ)”。 それは、孤独に戦う少年に寄り添う。 一人の少女の、祈りの力である。 二人のマスターの遺志を受け継ぎ、限界を超越した“霊基”。 機凱の弓兵との死闘により、極限まで到達した“共鳴”と“解析”。 心を記録するミラーピースを介して、届けられた小鳥の“祈り”。 彼女を呼び起こす奇跡が、祝福が、此処に揃う。 その歌は、いつだって。 彼が“再起”する時に奏でられる。 ―――愛だけは、終わらせない。 ◆◇◆◇ ―――解けないココロ溶かして――― ―――二度と離さない、あなたの手――― 《あなたは、死なせない》 《今度こそ、私が傍にいるから》 ――――“SONG OF DIVA”―――― 《立ち上がって、GV―――!!!》 ◆◇◆◇ ―――雷鳴が、轟いた。 ―――歌が、響いた。 蒼き閃光が、眩い輝きを放つ。 絶望を超越した極光が、降臨する。 嵐のように吹き荒れる魔力の渦。 巻き起こる激流の如く、迅雷が駆け巡る。 愛の歌が、聞こえる。 愛の歌が、木霊する。 愛の歌に、紡がれて。 その雷は、極限へと到達する。 波紋が、大地を揺らす。 解き放たれる“力”が、衝撃を巻き起こす。 溢れ出る雷電の煌きが、轟き渡る。 舞い上がる粉塵は、やがて“英霊”の纏う気迫に散らされていく。 その身には、数多の傷を背負う。 摩耗と疲弊は変わらず、彼の肉体を蝕む。 それでも、今の彼は―――先程までの瀕死の姿とは、明らかに違っていた。 溢れ出んばかりの魔力の高まりが、その霊基を究極の域へと導く。 蒼き雷霆―――ガンヴォルト。 煌めく稲光の中心に、彼は立つ。 荒れ果てた焦土に、凛として佇む。 混迷の朝を、満ちゆく“希望”が切り裂く。 “新たなる神話”が、ここに幕を開ける。 シュヴィ・ドーラは、目の当たりにした。 満身創痍の姿で復活した、“蒼き雷霆”の姿を。 癒えぬ負傷と消耗を背負いながら、それでも 精悍に佇む“英霊”の姿を。 霊核を確実に撃ち抜いた筈なのに―――雷霆は今もなお健在だった。 そのことに、シュヴィは驚愕を隠しきれなかった。 ―――そして。 ―――少年の傍らに寄り添う。 ―――“電子の歌姫”を。 ―――シュヴィは、認識した。 金色の髪を靡かせて。 胡蝶のような衣装を纏い。 碧い羽を、背中から拡げていた。 まだ幼さの残る、その眼差しに。 確固たる意志と覚悟を、宿していた。 “歌姫”は、守護霊のように雷霆へと寄り添う。 その直ぐ側で、彼女は歌い続ける。 “電子の謡精(サイバーディーヴァ)”。 蒼き雷霆の伝説と共に往く、祈りの歌姫。 孤独に戦い抜いた少年に寄り添う、たった一人の少女。 慈愛と祈念をその胸に抱き、奇跡はそこに降臨する。 雷霆の傍らに寄り添う“少女”。 その姿を、視覚に焼き付けて―――。 シュヴィは思わず、言葉を漏らす。 「あなたは……“天使”?」 そして、その瞬間。 “雷霆”の魔力が、迸るように昂った。 まるで、天をも撃ち抜く稲妻のように。 まるで、天をも引き裂く暴龍のように。 その気迫が、歌姫の加護と共に―――解き放たれた。 シュヴィは瞬時に、自らの武装を解き放つ。 その鋼鉄の巨翼によって、“殲滅”を開始せんとする。 敵は“雷霆”と“歌姫”――――。 全火力を駆使して、徹底的に、確実に仕留める。 「【典開】―――――」 故に、躊躇いはしなかった。 初手より、最大火力を放つ。 迷うことはなかった。 この一撃で、仕留める。 例え、仕損じたとしても。 次の爆撃で、討ち滅ぼす。 灰燼すらも、遺してはならない。 「偽典・混沌天―――――」 瞬きの刹那。一瞬の狭間。 シュヴィは、信じられぬ現象に直面する。 蒼き雷霆の姿が、突如として“消えた”。 その視界から、忽然と消失し。 即座にシュヴィは、魔力反応を探知しようとした。 その瞬間の出来事だった。 ―――貫くような衝撃が、突き抜けた。 ―――弾けるような破砕の音が、轟いた。 シュヴィの思考が、理解が、振り切られる。 何が起きたのか。それを認識するまで、半歩遅れる。 自らに起きた異変に気付いた彼女は、驚嘆に目を見開く。 全典開の械翼。 その巨影が、崩されていた。 右翼の中心が、“雷撃”に撃ち抜かれていた。 翼の右半身が、大きく損壊する。 走り抜けた衝撃に、そのバランスを崩す。 何が起きた。一体、どうなっているのか。 シュヴィは、その攻撃の正体が分からなかった。 視認どころか、魔力探知をも掻い潜って、その一撃は叩き込まれた。 やがてシュヴィは、ようやく認識する。 自身の感知を突破して―――気が付いた時には既に滞空をしていた、“蒼き雷霆”の姿を。 彼は一瞬で宙を翔け抜けて、その身を雷撃の流星と化し。 シュヴィの探知さえも振り切って、巨翼の半分を貫いたのだ。 振り返ったシュヴィは、己に背を向けるガンヴォルトを視た。 ―――いつの日か 世界が終わる時も――― ―――あなたさえいれば 怖くないの――― 飛翔した雷霆を支えるのは。 愛を歌い、揺蕩う“謡精”。 少女は、ただ謡い続ける。 少年への想いを貫くように。 その唄は、戦場を駆け抜けていく。 ―――冷たく降りしきる雨[降りしきる]――― ―――陽炎消えて[陽炎]――― 響き渡る歌。 少年を導く祈り。 蒼き雷霆は、いま。 焦がれ続けた愛と共に在る。 シュヴィは、焦燥と動揺に駆られる中。 残された隻翼で、ありったけの武装を解き放つ。 怒号のような咆哮と共に、それは解き放たれる。 「【典開】―――――ッ!!!」 『偽典・焉龍哮』―――『一斉掃射』。 拡散する追尾弾の如く放射される、獄炎の濁流。 龍精種の放つ魔技『崩哮(ファークライ)』。 それを模倣し、殲滅へと特化させた爆撃。 破滅の流星群が、雷霆へと殺到する。 「迸れ」 ―――切れ間から差し込んだ――― ―――光の梯子 生命の道標(コード)――― 「蒼き雷霆“アームドブルー”」 ―――あどけない寝顔見つめる――― ―――月明かり真白の花――― 蒼き雷霆は。 ただ静かに、呟く。 迫り来る死の影を前にしても。 彼は動じず、怯まず。 その詠唱と共に―――無数の鎖を、展開する。 張り巡らされる巨大な鎖。 迫る『焉龍哮』を、真正面から受け止め。 迸る雷電によって、その全てを搔き消していく。 ―――戯れに裂いた水面に――― ―――広がって消えていく――― それは、シュヴィが解析した『ヴォルティックチェーン』のようであり。 しかし、出力と威力は、桁違いに跳ね上がっている。 彼女は、間もなく気付く。 これは『ヴォルティックチェーン』とは違う。 この能力は、技は、己でさえも知らない技であると。 記憶の共有による『解析』を経ても尚、この術理には辿り着かなかった。 ガンヴォルト―――オルタ。 その力は、奇跡の果てに解放された。 今ここにいる彼が本来体得していない異能。 暴龍へと到達した『未来の雷霆』が行使する、拒絶と破滅の力。 それは本来の彼自身が掴み取る技ではない。 されど、飛騨しょうことの離別を経て。 威信(クードス)の蓄積を経て。 解析による潜在能力の解放を経て。 自らの限界さえも突破したガンヴォルトは、己の伝説の極点へと至った。 ―――茨の道でも優しさ――― ―――此処にある胸の奥に――― 鎖環(ギブス)の伝承と逸話は。 既に、彼のものと化している。 故に、この究極の技さえも行使できる。 “第八波動”の力に飲まれ、臨界点を超えて発動した異能。 未来の伝承において、それは己の仲間へと向けられた。 しかし今は、違う。 蒼き雷霆は、己の意地を貫き通すために、その技を放つ。 シュヴィは、咄嗟に発動しようとした。 解析。敵の武装と能力を読み取り、己のものへと昇華する。 機凱種の中でも『解析体』と呼ばれる個体が持つ技能。 その術を使えば、恐らくは雷霆を守る『歌』さえも模倣できる――。 ―――解けないココロ溶かした――― ―――あなただから――― しかし。 だというのに。 彼に寄り添い、歌い続ける少女を見て。 シュヴィは、足踏みをした。 覚悟を振り絞り。 懸命に歌い続けて。 その未来に、祈りを捧げて。 歌姫は、其処に佇む。 たった一人の少年を、支えている。 そんな少女の姿が、視界に焼き付く。 思考回路に、刻み込まれる。 その鮮明な姿が。 シュヴィに、衝撃を与える。 解析―――出来ない。 この能力は、模倣し得ない。 否、違う。 シュヴィは“躊躇った” 何故ならば。 それが彼の“よすが”であることを。 彼の心の拠り所であることを。 シュヴィは、理解してしまったからだ。 自分だけの愛(ココロ)を、他者に差し出す。 自分だけの愛(オモイ)を、他者に捧げる。 その重みを、その意味を、彼女は誰よりも知っていて。 だからこそ、躊躇した。 少年に寄り添う、無垢な愛を―――“模倣”することなど出来ない。 そして。 蒼き雷霆は、呼吸を整える。 自らに寄り添う『意思』を噛み締めて。 無数の鎖を、次々に解き放つ。 これが、究極の雷撃。 これが、最強の雷霆。 天を穿つ、極限の技。 伝説は、幕引きへと至る。 ――――祝福。選択。再生。覚醒。 ――――救済。顕天。未来。愛情。 ――――雷霆よ、迸れ。 ――――拒絶しろ。 ――――拒絶しろ、哀しみを!! 「オクテスッ、ヴェトォォォォォォ―――――――!!!!!!!!!!!」 ―――蒼雷が、蒼天を裂いた。 無数の鎖を起点に、空と雲を穿つ雷撃が解き放たれた。 まるで、宙を舞う『星屑の嵐』のように。 解き放たれた至高の雷電は、械翼ごとシュヴィを飲み込んだ。 ◆ 翼が、焼け落ちていく。 己の力が、崩れていく。 限界を超えたガンヴォルトの雷撃。 それは、全典開―――シュヴィの切り札さえも打ち砕いた。 己は、負けるのだろうか。 雷撃に焼かれたシュヴィの中に、そんな想いが過る。 なけなしの意地だった。 霊核の損傷は、修復不可能な域に届いている。 最早、消えてゆくことは避けられない。 だからこそ、シュヴィは。 ガンヴォルトを此処で食い止めることを選んでいた。 彼をみすみす逃して、最期の足掻きをさせないためにも。 せめて、この場で刺し違えてみせる。 そう思考して、戦い抜いていた。 ――――それだけじゃ、ない。 そんな“合理性”に割り込むように。 思考には、ノイズが走り続ける。 それは、心あるが故に芽生える“感情”。 命ある者が持ち得る、有機的な“非合理性”。 ――――私は、ただ。 ――――この人に、勝ちたい。 記憶の共鳴。度重なる激突。 繰り返される交錯の中で。 シュヴィは、ガンヴォルトの想いを掴んでいた。 彼もまた“大切な誰か”のために戦い抜いて。 自らの意志を、愛を、貫かんとしている。 そんな彼に対して、共感と慈悲を抱き。 同時に―――“負けたくない”と思った。 それは、心あるが故の想い。 共に祈りを握り締める相手への、一欠片の対抗心。 愛を背負い、愛を貫くことで、己の存在証明を果たす。 それは即ち、エゴと呼ぶべきものなのだろう。 心という動力が、駆け抜けていく。 祈りを焚べて、限界を突き抜けていく。 械翼は崩壊した。 無数の武装には、もう頼れない。 即座に発動できる武器は、数少ない。 しかし。 それで、十分だった。 この力があるのならば。 ああ―――構わなかった。 ◆ 機械仕掛けの肉体は、電撃で焼かれ。 内部のあちこちから、鉄屑が軋むような音が響き。 顔の左半分などの外殻も損壊し、無機質な鋼鉄の素体が顕になっている。 既に魔力の肉体は消滅寸前になりながら。 地上へと堕ちたシュヴィは、それでも立つ。 彼女は、眼前に降り立った敵を見据えた。 アーチャー――蒼き雷霆、ガンヴォルト。 彼は、真っすぐにシュヴィを見据えていた。 その傍らに、歌姫が漂いながら。 雷霆は、最後の決着を悟ったように身構える。 「【典開】」 翼を失ったシュヴィ・ドーラ。 彼女が解き放つ、最後の武器。 それは、大地を焼き尽くす咆哮でも無ければ。 天を引き裂く一撃ですらない。 「『偽典・走刃脚(ブレイド・アポクリフェン)』」 ―――彼女が受け継いだ。 ―――祈りの、証だった。 機凱の両足を覆った装甲を見て。 蒼き雷霆もまた、身構える。 「……『蒼き雷霆(アームドブルー)』」 その掌に雷撃を纏わせて。 彼は、眼前の敵と対峙する。 沈黙と、静寂。 焦土と化した戦場に。 荒れ果てた風が、吹き荒ぶ。 刹那のような時間。 永遠のような睨み合い。 互いの呼吸が、意識が。 鮮烈なまでに、研ぎ澄まされていく。 ―――そして ―――二人は。 ―――同時に。 ―――疾走した。 駆け抜ける二つの閃光。 交錯する雷撃と斬撃。 擦れ違い、突き抜けていく。 一瞬の間に、全てを賭けて。 二人は、死線の果てへと到達する。 再び、世界から。 音が、消え失せた。 荒廃した大地で。 二人は、背中合わせで佇む。 一秒でさえも、無限に感じられる。 そんな交錯と余韻の果てに。 やがて、その場に崩れ落ちたのは。 機凱のアーチャー。 シュヴィ・ドーラだった。 ◆◇◆◇ ―――シュヴィ。 ―――ごめんな。 お前は、悪党の俺とは違う。 目的のために、俺が捨てたものを。 お前はずっと、持ち続けていた。 そんな慈しいお前を、俺なんかに付き合わせた。 俺は所詮、運命に踊らされる道化だった。 挙句の果てに、最期までお前を呪ってしまった。 それでも。 身勝手だとしても。 俺のエゴだとしても。 お前だからこそ、伝えたい。 今まで、ありがとう。 シュヴィ。 お前は、俺が捨てた“心”だ。 お前と出会えて、良かった。 お前が居たから、俺は救われた。 だから、いつかまた。 一緒に、ゲームを始めよう。 俺の大切な仲間も、交えて。 今度こそ、皆で勝とう――――。 ◆◇◆◇ 壮絶な火力の応酬、その果てに。 周囲一帯の街並は、焦土と化していた。 空爆によって焼き払われたように。 人々が生活を営んでいた市街地は、硝煙に包まれた更地と成り果てていた。 鮮明な青空に見下されながら。 戦禍の舞台に、風が静かに吹く。 穏やかな息吹のように。 傷付いた街を、癒やすかのように。 死闘は幕を下ろし。 其処には、沈黙が横たわる。 機凱のアーチャー、シュヴィ・ドーラ。 彼女はただ、空を見つめていた。 最早、その身は動かなかった。 幾ら魔力を振り絞ろうとしても。 機巧の肉体は、応えてはくれない。 仰向けに倒れる少女に、終わりの時が訪れる。 故にシュヴィは、茫然と思う。 ―――果たせなかった。貫けなかった。 ―――リップの最期の願いに、報いることが出来なかった。 霊核の損傷という壁に阻まれ、もはや己の現界の維持は不可能であると悟り。 せめて雷霆のアーチャーだけは食い止めることを選び、互いの意地をぶつけ合い。 そしてシュヴィは――――敗北した。 リップは、己に全てを託した。 それなのに、自分は―――。 彼の望みを、叶えられなかった。 彼の祈りを、繋げられなかった。 剰え、彼の遺志にも応えられず。 なけなしの意地さえ、押し負けた。 慙愧の念と、瀕死の身体に打ちのめながら。 しかし、不思議な心地の中で。 ゆっくりと、視線を動かした。 自身の右手に触れる“暖かさ”。 優しく添えられた“温もり”。 シュヴィはその正体を、すぐに察した。 雷霆のアーチャー、ガンヴォルト。 彼は、横たわるシュヴィの側で膝を付き。 彼女の右手を―――そっと握っていた。 その最期を、見届けるかのように。 悲嘆の闇へと、墜ちることのないように。 ガンヴォルトの傍に、“謡精”はもう居なかった。 彼はただ一人で、其処に佇んでおり。 それでも今は、死にゆく少女に寄り添うことを選んでいた。 「……やっぱり……」 己が消えゆくことを悟りながら。 シュヴィは、ぽつりと呟く。 「泣いて……いるん、だね……」 手を添える少年の温もりを、確かめながら。 シュヴィは、言葉を紡ぎ出す。 「……誰かの、ために」 その温もりの意味を、少女は知っていた。 理解できない筈がなかった。 誰かのために、意地のために、祈りのために。 自分の痛みと哀しみを押し殺して、それでも走り続ける。 そんな“慈しい人の姿”を、シュヴィは知っていた。 「すまない」 そして、ガンヴォルトも。 少女の想いを、噛み締めていた。 「キミとも……違う道が、あれば」 誰かに寄り添い、共に歩もうとする。 誰かの痛みを知り、支えようとする。 何かを背負う誰かのために、自分も背負うことを選ぶ。 ガンヴォルトは、そんな少女の在り方を見つめていた。 「手を、取り合えたのかもしれない」 二人の記憶と感情は、融け合い。 共に分かち合い、理解へと至った。 この死闘の果てに、少年と少女は。 「ボク達は……同じ、だから……」 互いに歩み寄り。 互いに慈しんだ。 その胸に抱く想いを。 その心に宿る、一欠片の愛を。 「“シュヴィ”。どうか、幸せに」 だからこそ。 “蒼き雷霆”は、餞別を手向ける。 “記憶の共鳴”の果てに知覚した、彼女の名を呼びながら。 例えこれから、共に消え行くとしても。 それでも、彼女の“幸福”を―――願わずにはいられなかった。 そんな彼の想いを受け止めて。 シュヴィは、呆然とした顔を浮かべて。 しかし気が付けば、その口元には。 穏やかな微笑みが、零れていた。 何故だが、その時。 シュヴィは、思った。 ――――“彼”の声が、聞こえると。 共に歩み、傍で寄り添ってくれた。 そんな“マスター”の声が、届いたような気がした。 心の中で反響した“彼の言葉”は。 シュヴィを案じるように、慈しくて。 シュヴィを労うように、穏やかで。 それがただの幻であるのか。 魔力パスに宿った彼の意思であるのか。 確かめる術は、無かったけれど。 彼女にとっては、それが聞こえただけでも十分だった。 ―――蒼き雷霆。 ―――彼も、同じだったのだろう。 彼もまた、声を求めていた。 その声との繋がりを噛み締めることが。 彼にとっての、安らぎだった。 シュヴィは、それを確認した。 「“ガンヴォルト”」 そして――その名を、呼んだ。 終わりへと向かっていく中で。 シュヴィは、“愛”に触れる。 その心に遺された、一つの哀しみが。 安らかに、浄化されていく。 「あなたも……幸せ、に……」 腕の中に居た少女。 シュヴィ・ドーラは、消えてゆく。 蒼い朝の光に、融けていくように。 身体を構築する魔力が、霧散していく。 穏やかな笑みを湛えて。 果てしない、蒼い空の下で。 風と共に、散り行く。 “少女”を看取った―――桜の花のように。 ――――リク。 朝日の中で去り行く少女は。 最期に、そう呟いていた。 その名の意味を。 ガンヴォルトは、既に悟っていた。 解析。感応。記憶の共鳴。 彼女が抱いていた愛を、彼は知覚している。 だからこそ彼は―――シュヴィの最期を、見届ける。 慈しみを、その瞳に湛えながら。 ガンヴォルトは、魔力の粒子となる少女を見守り続けた。 空は、果てまで澄んでいた。 稲光のように、鮮明な蒼だった。 そんな色彩へと還るように。 愛を抱く少女、シュヴィ・ドーラは。 この舞台から――――姿を消した。 【アーチャー(シュヴィ・ドーラ)@ノーゲーム・ノーライフ 消滅】 腕の中にいた少女は、去っていき。 光の欠片と化して、空へと舞っていく。 花弁のように消える温もりを、見送りながら。 ガンヴォルトは静かに、哀しげに、微笑んだ。 そして、空を見上げた。 蒼い情景を、視界に焼き付けて。 少年は、ゆっくりと立ち上がった 舞台の上から、降りていくかのように。 彼はただ、か細い足取りで、歩き出す―――。 ―――ああ。 ―――ボクも、潮時だ。 彼は、既に理解していた。 己の霊基が、とうに限界を迎えていたことを。 意地と気力だけで、現界を成し遂げていた。 崩れゆく霊核をものともせず、此処まで戦い抜いた。 あらゆる能力を振り絞って、決死の覚悟で戦い抜いた。 それはまさに、限界の踏破だった。 ここまで戦い抜けたのは、奇跡であり。 “彼女”が寄り添ってくれたからなのだろう。 ――――今はもう、あの歌声は聴こえない。 それでも、構わなかった。 酷く満足で、清々しい気持ちだった。 脳裏に、一人の少女の顔が浮かぶ。 この聖杯戦争で、自分を呼び寄せたマスター。 取り零した愛と再び向き合うために、翔び続けることを決意した“慈しい小鳥”。 彼女の唄が、笑顔が。 ふいに頭の中を、駆け抜けた。 それだけで、もう悔いはなかった。 それだけで、彼は満たされていた。 もう振り返ることはない。 ただ一つ、願うことが在るとすれば。 ――――神戸しおと、そのライダー。 ――――彼らの旅路の果てに、幸福があらんことを。 飛騨しょうこ。松坂さとう。 彼女達が繋いだ愛の先にいる少女。 彼女達の未来が、“幸せなもの”であってほしい。 それだけが、今の雷霆の願いだった。 それでいい。それが、彼の祈りだった。 そして―――少年は、空を見上げた。 空の果てへと届いた唄に。 想いを、馳せていた。 ◆◇◆◇ 消えてゆく。 ボクの存在が。 座へと、還っていく。 『あなたと、その娘の愛も……』 『終わることなんてない』 誰かの声が、聞こえる。 誰かの歌が、聴こえる。 『あなたと出会えて―――』 『私はずっと、幸せだったよ!!』 これは、走馬灯なのだろうか。 最期に見る、夢なのだろうか。 その答えは、分からなくて。 けれど、その声の先に。 ボクは、眩い光を見ていた。 ◆◇◆◇ ―――慈しい風が吹いて。 ―――懐かしい匂いがした。 ◆◇◆◇ 永遠のような時間が。 ただ静かに、流れ続けていた。 光の中に、包まれるように。 記憶の果てを、揺蕩うように。 暖かな静寂に、身を委ねていた。 此処は―――何処なのだろう。 そんな疑問を、ふいに抱いて。 意識が少しずつ、覚醒へと向かっていく。 ボクは、ゆっくりと瞼を開いた。 雲の一つも無い、青々とした空。 果てまでも鮮明な色が、視界に入った。 それは先程まで見つめていた景色と、似通っていて。 自分は、生きているのか―――そんな疑問を抱きかけた。 しかし、そうではなかった。 ボクはそのことに、すぐ気付いた。 その“懐かしい声”を聞いて。 ボクは何かを悟って、受け入れた。 『おかえりなさい、GV』 仰向けに横たわるボクの顔を、“彼女”は覗き込んだ。 薄い紫色の髪を靡かせて、紅い瞳でボクを見つめる。 ひどく、懐かしい声で―――懐かしい顔だった。 爽やかな風が吹く平野で、ボクは“彼女”の膝に頭を乗せて眠っていた。 ボクは呆然と、“彼女”を見上げていた。 あの“奇跡”を経て、今度こそ別れへと至ったと思っていた相手が。 ボクのすぐ傍に、確かに存在している。 「―――――シアン……?」 ボクは、“彼女”の名を呼んだ。 “彼女”は―――“シアン”は、慈しみを眼差しに込めて。 ボクのことを、じっと見つめていた。 『あなたを苦しませて、ごめんなさい』 そしてシアンは、そう告げる。 その声に、切なさを滲ませて。 『あなたを独りにして、ごめんなさい』 ボクは、彼女の言葉を聞き届ける。 シアンの懺悔を―――ただ、受け止める。 『私は、あなたを支えられなかった』 彼女の顔に浮かぶ、悲しみを見て。 ボクは思わず、言葉を零しそうになった。 ――――そんな顔をしてほしくない。 ――――キミに罪なんかない。 シアンの謝罪に、そう返しそうになって。 けれどその言葉は、喉の手前で堰き止められた。 彼女が悔やむ意味を、ボクは理解してしまったから。 “自分のせいで、貴方を傷付けてしまった”。 それは―――ボクも、シアンに抱いていた感情だったから。 『そして……』 それから、彼女は。 一呼吸の間を置いて。 悲しみの顔を、微笑みへと変えた。 『誰かの祈りを守ってくれて、ありがとう』 ――――そう伝えたシアンに。 ――――ボクは思わず、目を見開いた。 『愛を唄う小鳥が、私に伝えてくれた―――』 感慨を噛み締めるように、シアンは呟く。 ボクの傍に寄り添ってくれた“小鳥”。 その歌は、彼女へと届いていた。 『あなたは最期まで、慈しい歌のために戦っていた』 彼女の言葉が。想いが。 ボクの心を、静かに癒やしていく。 胸の内に抱いてきた葛藤が。 その慈しさに、解かれていく。 『おつかれさま。どうか、ゆっくり休んで』 そうして、シアンはボクに笑いかける。 穏やかで、安らかな彼女の声に。 ボクは思わず、言葉を失いかけて。 「……ボク、は」 けれど、ボクは。 意を決して、言葉を紡ぐ。 「キミの存在と、向き合えなかった」 シアンが、己の悔いを伝えたように。 「キミを喪った罪ではなく、キミ自身を見つめるべきだった」 ボクもまた、伝えたかった。 「ボクこそ……キミに、謝らなくてはならない」 彼女への想いを。 彼女に抱く、懺悔を。 シアンがそれを届けたように。 ボクも、それを届けたかった。 それこそが――此処まで背負い続けた、ボクにとってのケジメだったから。 そんなボクの告白に、シアンは。 何処か切なげに、優しく受け止めるように。 静かな微笑みを浮かべていた。 『……一緒だったね、私達』 ―――ああ、きっとそうなのだろう。 ボクはただ、それを悟った。 ボクも、彼女も。 互いを想い、互いを愛し、運命を共にして。 それ故に、ボク達は擦れ違った。 信じ合っているにも関わらず、ボク達の感情は平行線を辿っていった。 だからこそ、ボク達は。 後悔を抱いて、此処まで至った。 愛する者を支えられなかった哀しみと共に。 ボク達は、歩み続けた。 『みんなの想いは、ずっとあなたと共に在る』 そして今、やっと二人は結びついた。 穏やかで、澄み切った、碧空の下で。 互いに後悔を分かち合いながら。 祈りの言葉によって、浄化された。 『私も、今度こそ……あなたの隣で寄り添うから』 シアン。 キミが、此処に居る。 そんな想いを、伝えてくれる。 それだけで、十分に幸福だと言うのに。 『だから。何度でも、伝えるよ』 彼女は、何処までも。 愛おしい言葉を、繋げてくれる。 『ありがとう、GV』 シアンが、ボクの頬に触れる。 優しく撫でるように。 ボクという存在を、確かめるように。 今の彼女は、とても幸せそうに笑っていた。 『私の――――愛する人』 彼女の温もりが。 ボクを、優しく包む。 その暖かさに触れて。 ボクはようやく、悟った。 ああ、そうか。 そうなんだな。 シアン、ボクは。 ここにいて、いいんだ。 ――――良かった。 「ありがとう、シアン」 ボクは、微笑んでいた。 掛け替えのない安堵を胸に抱いて。 その安らぎを、抱いていた。 「――――ボクは今、幸せだよ」 【アーチャー(ガンヴォルト(オルタ))@蒼き雷霆ガンヴォルト爪 消滅】 時系列順 Back IMAGINARY LIKE THE JUSTICE Next はじまり、はじまり 投下順 Back IMAGINARY LIKE THE JUSTICE Next はじまり、はじまり ←Back Character name Next→ 165 この愛をくれたあなたに(1) 皮下真 172 人外魔境渋谷決戦(1) 165 この愛をくれたあなたに(1) ライダー(カイドウ) 172 人外魔境渋谷決戦(1) 165 この愛をくれたあなたに(1) アーチャー(シュヴィ・ドーラ) GAME OVER 165 この愛をくれたあなたに(1) アーチャー(ガンヴォルト[オルタ]) GAME OVER
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2019.10.14 紅白戦 スコア
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2017.11.04 OB戦 スコア
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2019.10.20 紅白戦 スコア
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2020.08.01 紅白戦 スコア
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2020.03.22 紅白戦 スコア
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mnemoniq / youhei shimizu Rank Name Score Just Great Good Bad Poor Comment 1 F 1115 363 15 0 0 5 カメラエラーのせいでボーパーが本スコアに…悔しい 2 KENT 1080 328 48 0 0 2 浜松の交流会での記念スコアです。 3 areacode60 1079 327 49 0 0 0 mnemoniq祭り初代IIIで解禁時にエンディングで遊べる演出がすごく好き 4 Yamajet 1056 307 66 3 0 0 20年おめ!ほんとにmnemoniqはIIDXでちゃんとした譜面を作り直してもらえてよかった 5 まるちょこ 1052 308 61 6 0 1 HS3.0、SUD、ランダム、セパレートとかいうアレなオプションでやったけどこれが限界かもなぁ(›´ヮ`‹ ) 6 KOTL 1050 298 78 0 0 0 神曲すぎて光らん・・・ 7 地底人 1048 296 80 0 0 1 とりあえずのパフェ。自分としては満足です。 8 ユタカ 1046 295 80 1 0 0 good1が心残り…(´Д⊂ヽ 9 S.CROW 1035 290 79 7 0 0 この筐体が昔設置されていた店の閉店最後にプレイした思い出の曲。mnemoniq大好き。 10 かるく 1032 286 84 6 0 1 少しだけ更新できた終盤でグレたのがもったいなかった 11 SYD 1023 281 85 10 0 0 97872-hs4 12 凹・_・凹 963 219 149 8 0 0 むねもにきゅー 13 Rest 955 216 147 13 0 2 HS2.5、SUD。 14 203 949 226 121 29 0 1 頑張ってみたけどGOODがちょくちょく出る 15 Yukke-UX 941 228 109 39 0 0 TwitterでWGCという店の存在を知り、初めて来たみたら気になるイベントをやってたので参加してみました。自分にしてはスコア良い方なのだが、やっぱり判定が厳しすぎる… 16 鴨居準 938 214 136 24 1 2 良かったらBMIIIスコアタ参加してください〜 私のようなそこまで上手くない人でもどしどし参加してくれると嬉しいです〜 17 WGC店長 936 209 143 23 1 2 癒し曲。疲労回復にmnemoniq。 登録者一覧 203 F KENT KOTL Rest S.CROW SYD WGC店長 Yamajet Yukke-UX areacode60 かるく まるちょこ ユタカ 凹・_・凹 地底人 鴨居準
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*スイング・スコア(目次) ---- あなたも自由な音楽の世界へ… ---- -[[人物紹介! http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5563.html]] ---- -リード・キョン※1 +[[第一楽章(前奏) http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5415.html]] +[[第二楽章(バース) http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5416.html]]※2 +[[第三楽章(コーラス) http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5417.html]] +[[第四楽章(ブリッジ) http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5419.html]] ---- -リード・涼宮ハルヒ +[[第五楽章(コーラス) http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5422.html]] +[[第六楽章(バース) http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5427.html]] +[[第七楽章(ブリッジ) http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5435.html]] +[[第八楽章(リフレイン) http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5438.html]] ---- -リード・長門有希 +[[第九楽章(バース) http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5441.html]]※3 +[[第十楽章(チェイス) http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5519.html]] +[[第十一楽章(ブレイク) http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5520.html]] +[[第十二楽章(オブリガード) http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5521.html]] ---- -発表会 +[[最終楽章(コーダ) http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5546.html]] ---- -フィーネ(終止) +[[闇/常識 http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5556.html]] +[[矛盾/光 http //w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5557.html]] ---- -※1 リード~ ソロをする人のこと。ここでは主人公のこと! -※2 バース・ブリッジ・コーラス~ それぞれ導入メロ(曲の説明部分)・つなぎメロ(曲の説明の補完)・サビ(曲の結論・主題)のこと。軽音楽曲の重要な要素。 -※3 リフレイン・チェイス・ブレイク・オブリガード~ それぞれ、繰り返し、追っかけ演奏、音止め(割り込み)、裏メロみたいな意味。 ----
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こんな場所あったのか・・・無限モードだと皆どのくらい出してるのかな? -- (名無しさん) 2009-10-02 13 18 57 左側のメニューから行けないからねぇ、自分も気付かなかった。無限モードは、縛りなしだといくらでも稼げるから、どんな縛りでプレイした上でのスコアかっていうのが重要じゃないかな。牧場なしのEASYとLUNAは参考にしたい。 -- (名無しさん) 2009-10-06 12 32 01 正直無限モードは牧場なしでやって欲しいわ。牧場アリだとかなり不毛な気がする。 -- (名無しさん) 2009-11-10 17 41 52 おお、左側のメニューから行けるようになってる。無限もそうだけど十万も牧場なしでやってほしい、これも牧場ありだとかなり不毛な気がする。て言うか全部牧場があると・・・ -- (名無しさん) 2009-11-15 23 04 23 最近またぱちゅコン起動してハイスコア狙ってるけど、盗人モードはマジでただのくじ引き……6時以降(特に9時以降)誰を引けるかが全てだった。 -- (名無しさん) 2012-11-18 02 59 33